小学校理科プログラミングの実践事例集

理科におけるプログラミングの位置づけ

プログラミング教育は、教育課程全体で位置づけられているものであり、様々な学年、教科、領域のどこかで行うことになっています。そのため、理科の時間で必ずやらなければならないものはではありません。もし、理科の時間にプログラミングを位置づけるならば、理科の学習内容全体から考えて、第6学年「電気の利用」でプラス2〜4時間が一般的でしょう。その場合のプログラミングは「体験」として位置づけられています。理科では、「電気の省エネ」や「電気の効率的な利用」をテーマに日常で使われているセンサーやプログラミングを体験的に学習ができる良さがあります。

「電気の利用」では「電気の省エネ」や「電気の効率的な利用」がテーマ

「6年の『電気の利用』なら、電気を使って動かしているプログラミングの機器を使っているのだから何をやってもよい」という考えは間違いです。なぜならば、理科という教科の中で扱っている以上、その単元の学習内容に繋がっていなければならないからです。第6学年の「電気の利用」では、電気の変換やエネルギーを効率よく利用している道具があることに気づくことについて扱うため、センサーを使ってプログラミングの体験をする場合は、電気の省エネや効率的な利用がメインテーマになります。例えば、車を使ってプログラミングでリモート操作することや、日常で便利なものをプログラミングで作ること、安全のために役に立つものを作ることなどのように、「電気の利用」の電気の変換や省エネと関係がない場合や、理科の授業なのにプログラミング教育自体が目的になってしまったりしている場合は、「電気の利用」の時間では扱えないと言えます。このような電気の省エネや効率的な利用と異なるテーマは、別の教科、領域等に委ねなければなりません。教材選択、授業の展開次第では、楽しい時間ではあっても、理科の学びになっていないことがあります。貴重な限られた授業時間です。教科の学びに繋がることが大切です。

間違った実践をしてはいけない! ダメな実践の例

【ダメ事例1】3年の電気の単元で、プログラミングで豆電球を点ける
 ここでのプログラミングはスイッチとして扱っているが、3年のこの単元では、本来回路についての学習(回路が1つの輪になっていると豆電球が点灯する)ことを理解するのに、スイッチの操作については、学習指導要領外の内容であり、単元と関係しているようで、全く関係していない。
(学習の本来の学習とずれている)

【ダメ事例2】4年の植物の成長で気温を記録するためにプログラミングを活用
ここでのプログラミングは、データーロガーとしての活用になる。しかしながら、学習指導要領解説の中では、プログラミングを体験することで学習が深まることが目的である。データーロガーとしての活用は、測定機器として活用であり、本体自記温度計や棒温度計もある。本来の理科機器を使わずして、準備に時間を掛けてプログラミングを無理矢理活用することに無理がある。
(プログラミングを導入することが目的となっており、理科の学習に重点が置かれていない)

【ダメ事例3】3年の昆虫を扱う単元でイモムシの形をしたロボットをプログラミングで動かす
ここでのプログラミングは、イモムシの動きを考えることである。しかしながら、3年の昆虫の単元では、イモムシの動きを学習する訳ではない。本来理科の授業では、昆虫の動きを学習するのではなく、体のつくりや居場所と環境の関係である。単元の中で例えばモンシロチョウのアオムシが出てきたからと言って、無理矢理イモムシのロボットを持ち出すことはナンセンスである。
(プログラミング機器の選定自体から間違っている)

【ダメ事例4】6年の人体で心臓の脈拍と同じタイミングでプログラミングで音を出す
ここでのプログラミングは、脈のタイミングで音を出すものである。この単元では、脈を測ることはあるが、時間を掛けてプログラミングでそれを再現したところで理科の学習にならない。心臓の動き(脈)によって血液が全身に送られていることを学ぶことが本来の目的である。
(理科では、血液が送られていることを学ぶことが学習指導要領の本来の目的であるが、「プログラミングで音を出す」ことが目的になってしまっている)

 

「プログラミング教育」と教科での「プログラミングの体験」は違う

理科の時間では、理科の学習内容の文脈の中でプログラミングを体験しても良いが、理科の時間で行う以上、理科の学習内容を逸脱したり、プログラミング自体を目的にして学習したりする時間ではありません。つまり「理科の時間にプログラミング教育をする」のではなく、「理科の学習内容を通してプログラミングを体験する」(理科の時間は理科教育をする)が正しいといえるでしょう。なんでもプログラミングと絡め、過度にプログラミングに時間をかけて、本来の学習内容が疎かになるような、本末転倒な事態にならないようにしたいものです。

実践のどこでプログラミング的思考をしているのか意識して授業をする

プログラミングをする際、1つ1つの命令を順序立てて作り上げていくことになります。命令の順序や命令自体を間違えると、自分の想定しているように動かすことができません。このように、プログラミングは、順序性について考えたり、例えば「気温30度以上になれば、電気を流すようにする」など、条件を考えたりすることが大切になります。このような考え方を「プログラミング的思考」と呼ぶことになりますが、考え方としては理科で言う、条件を制御したり、問題解決の過程を通して問題を解決したりする際に必要な「科学的思考」に近いと言えます。

 

プログラミングを体験することで、理科の本来の学習内容がさらに拡がるようにしたいものです。

小学校理科プログラミングの実践事例集

電気を無駄なく使うにはどうしたらよいかを考えよう(三鷹市立北野小学校)-レゴ事例
電気を効率よく使うにはどうしたらよいかを考えよう(横浜市立西富岡小学校)-スクラッチ事例
電気を効率よく使うにはどうしたらよいかを考えよう(あきる野市立西秋留小学校)-メッシュ事例
 

投稿者プロフィール

寺本 貴啓
寺本 貴啓國學院大學人間開発学部 准教授
博士(教育学)

1976年兵庫県生まれ。静岡県の小・中学校教諭を経て、広島大学大学院に学んだ後、大学教員になる。専門は、理科教育学・学習科学・教育心理学。特に、教師の指導法と子どもの学習理解の関係性に関する研究、その周辺の学習評価、教員養成、ICT機器を活用した指導に関する研究に取り組んでいる。また、小学校理科の全国学力学習状況調査問題作成・分析委員、学習指導要領実施状況調査問題作成委員、小学校教科書編集委員、NHK理科番組委員等を経験し、小学校理科を研究の基盤としている。

ホームページ http://hatena.net